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EP 子猫のお散歩

あるところに一匹の小さな子猫が居ました。

子猫はとっても冒険好きで、毎日気ままに散歩をします。

今日は何が見つかるかな?どんなお友達と出会えるかな?

子猫は今日もでかけます。

おひさまが昇り始め、まだ少し肌寒い中、子猫が塀の上をてくてくと歩いていると大きな犬に出会いました。

「おはよう犬さん!」

子猫は元気よく挨拶をします。

「おはよう、小さいお嬢さん」

犬はゆっくりと顔を上げ、子猫に挨拶を返しました。

「犬さん、首についてる輪っかはなぁに?」

犬の赤い輪っかに、子猫は興味を引かれます。
犬はとても誇らしげにその輪っかを見せました。

「これはね、友達の証なんだ」

子猫は首を捻ります。

「友達の証?」

犬は頷きながら言いました。

「そう、このおうちに住んでいる人達と友達なんだって、この輪っかが教えてくれるんだ」

子猫はとても羨ましそうに言いました。

「へぇ〜!キレイな輪っかだね!」

子猫は塀から降りて、おっきな犬に近付き赤い輪っかを見ます。
犬は夢中になってる子猫に言いました。

「お嬢さんはお散歩かい?」

子猫は犬の顔を見上げながら頷きました。

「うん!色んなものを見に行くんだ!」

犬は言いました。

「ここはとっても面白いものがいっぱいある。そうだ、公園に行ってみるといい。きれいな色の葉っぱがあったよ」

子猫はパッと目を輝かせます。

「ほんと!?」

子猫がすぐさま走りだそうとしたので犬は子猫を留めました。

「これを持っていきなさいお嬢さん」

子猫は犬から赤いマフラーを貰いました。
犬は満足そうに頷きます。

「友達の証。寒いから体に気をつけてね」

子猫はとっても嬉しくなりました。
おっきな犬に行ってきますと元気よく言って、公園に向かいます。
おっきな犬は嬉しそうに駆けていく小さな背中を見てニッコリと笑いました。

おひさまが高く登り暖かくなった頃、子猫は公園につきました。
そこでは赤や黄色の葉っぱが一面に広がっていました。
子猫は目を輝かせて公園の中を歩きます。

「こんにちはお嬢さん」

その時、突然上の方から声をかけられました。子猫がびっくりして上を向くと、白い小鳥が木の上に止まっています。

「わぁ〜、鳥さんだぁ!こんにちは!」

鳥は笑いながら言いました。

「鳥は珍しい?」

子猫は答えます。

「うん!お空を飛んでていっつもお話できないの」

子猫はぴょんぴょんと飛び跳ねて喜びます。小鳥は優しそうにほほえみながら子猫に言いました。

「お嬢さんは何をしているの?」

子猫は言います。

「お散歩!色々なものを見たいの!ねえねえ鳥さん、お空の景色ってどんな感じ?」

小鳥は少し考えながら言いました。

「そうだね〜、とっても広いよ。飛べるようになってから自分が見ていたものはちっぽけだったんだと思ったぐらい」

子猫はとても羨ましそうに言いました。

「いいなぁ〜、私も羽があればいっぱい色んなものを見に行けるのになぁ」

小鳥は自分の羽をじっと見ている子猫に言いました。

「大きくなったら色んなものを見に行けるようになる。ボクもそう聞いたから」

子猫はパッと顔を輝かせます。

「ほんと!?早く大きくなりたいなぁ〜」

小鳥は頷きました。

「ああ、きっと出来るよ」

子猫は小鳥に行ってらっしゃいと言って小鳥が飛んでいくのを見送ります。それから子猫はまたてくてくと歩き始めました。

おひさまが沈み始め、少し寒くなってきた頃、子猫は一人の少女に出会いました。
少女はしくしくと泣いていてとても悲しそうです。

「どうしたの?」

子猫が少女に近付いて言いました。すると少女は泣きながら言います。

「一人ぼっちで悲しいの」

子猫は言いました。

「お友達がいないの?」

少女は悲しそうに首を振ります。

「お友達がいたんだけど、遠い所に行っちゃったの…」

子猫は言いました。

「もう会えないの?」

少女は頷くと、また泣き出してしまいました。
子猫は少し考えると、ちょっと待ってて、と『あるもの』を探しに行きます。

「どこにあるかな?こっちかな?」

どんどんと暗くなる中、子猫は必死に『あるもの』を探します。

「これは短いし、あれは色が違うし…」

ああでもない、ここでもないと探し回り、日が完全に沈みそうなその時ついに子猫はそれを見つけました。

「見つけた!友達の証!」

子猫は少女の元に急いで戻ります。
少女は子猫を待ってくれていました。
子猫は咥えていたものをそっと地面に置きます。それは一本の赤い毛糸でした。

子猫は言いました。

「これは友達の証!」

少女は首を傾げます。

「友達の…証?」

子猫は胸を張って頷きます。

「おっきい犬さんがね、教えてくれたの。友達なんだって教えてくれる赤い輪っか!」

少女は毛糸を拾い上げました。そしてキュッと指に結びます。
子猫はニッコリと笑いました。

「これで一人ぼっちじゃないよ!」

少女は赤い輪っかを見て呟きます。

「友達の証…」

子猫は言いました。

「それに鳥さんがね、教えてくれたの。大きくなったら色んなものを見に行けるようになるんだって!大きくなったら、そのお友達とまた会えるかもしれないね?」

少女の目に、もう涙はありません。

「私、大きくなったら素敵な友達が出来たって言いに行く!」

子猫と少女は笑い合いました。

明日は何が見つかるかな?どんなお友達と出会えるかな?

子猫はとっても冒険好きで、毎日気ままに散歩をします。

いつか大きくなって、色んなお友達に合うことを夢見て。

(引用:フリーポエム 「子猫のお散歩」2,351文字4分)

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